qualiadiversity’s diary

ダイバーシティ&インクルージョンな日々を楽しむヒントや情報を発信しています。

対話とは、価値観の対立を前提に行うもの

フィンランド教育を普及促進している北川達夫さんによる「対話」の話は奥が深い。


 「対話」とは、広辞苑によると「向かい合って話すこと。相対して話すこと」となっているが、グローバルコミュニケーションにおける対話は、かなり異なる意味をもっているようだ。

対話とは・・
価値観の対立を前提とし、積極的に対立を顕在化させ、積極的に調和点・妥協点を見いだし、協生と協創の道を探る創造的課程 である。

 「価値観の対立を前提とし、積極的に対立を顕在化させる」という北川さんの話に目から鱗がまた1枚おちた。そうか、対話というのは、お互いの違いを知ることから出発するのか。A×B→AかBではなく、A×B→C(A‘+B’)となることが対話なのだ。特にAがA‘になるという変化が重要だという。つまり相手に触れることによって自分が変わる(自己の再組織化)によって、力を合わせて問題を解決しようという協生が生まれるのだ。

●対話の基本姿勢
 対話(ダイアログ)とは、「ダイア」(通る・流れる)と「ロゴス」(意味・言葉)を語源とするギリシャ語からきている。そのため対話の基本姿勢としてつぎのようなことが大事となる。

・徹底して言語化する。言葉にして初めて存在する
・知識と経験を共有する。言語化された意見・知識・経験は共有される(ただし、それ を持っているから優位な立場になるわけではない。言葉を個人から切り離すことが重 要である)
・戦わない 勝ち負けを基本とする闘技型民主主義には限界がある。対話にとって重要 なことは熟議型民主主義へ転換すること。

 振り返ると、ダイバーシティを推進する中でずいぶん闘技型を行ってきたように思う。しかし戦いを挑めば挑むほど、相手は頑なになりなかなか話が進展せずにもどかしい思いをしてきた。それに気づいて以来いつも心がけているのは、「太陽政策」でいくこと。相手の価値観や考えを受け入れ、その違いを認め合うことからスタートする。そうすることでお互いを理解しようという雰囲気が生まれるのだ。
それはまさに「熟議型」。心したい言葉である。

さらに、対話の基本として2つの考え方を学んだ。それは、エンパシーとメタ・コンセンサス。

・対話の基礎技能 エンパシー

 コミュ二ヶーションでは、相手の感情を理解することが不可欠だが、その技法は2つある。シンパシー(synpathy)とエンパシー(empathy)だ。
シンパシーは、同情、思いやりであり、相手の心情を情緒的に理解する、相手の気持ちがわかるというのが前提である。伝統的コミュニケーションにおいて重視されてきたものだ。一方、エンパシーとは、感情移入、共感能力である。相手の気持ちはわからないという前提のもとに、相手の状況を論理的に推察すること(自己移入)を意味する。グローバルコミュニケーションにおいて重要となる技法である。
フィンランドメソッドは、このエンパシーを徹底的に鍛えることを大きな目的としている。

 前回も述べたように、フィンランドではすべてを問題の解決ととらえ、小学校低学年で問題と解決の型を身につけることを重視する。
さらに、現実と結びつけるために、物語による問題解決を重視しているが、その基本パタンは、問題・解決例の提示→解決策の評価→他の解決策を模索するという流れになる。そのプロセスにおいて、常に自分だったらどうするか(エンパシー自己移入)を考えながら、一番よいと思う解決策をみんなで考えるというもの。

 北川さんは、シンパシー(感情移入)の状態ではエンパシーはできないという。解釈の積み重ねから推論を生み出し、推論から解決策が出てくるのであり、対話においては、エンパシーがより重要となるのだ。ただ、気をつけなければならないことは、自他の区別をしっかりもつこと。確固たる意志がないと流されてしまう危険があるという。


●対話の基礎知識 メタ・コンセンサス

合意(コンセンサス)を生むプロセスには4段階のメタ・コンセンサスがある。

第1段階 価値レベル(表面の対立の下にある価値を探る)
第2段階 信念レベル(それぞれのもつ価値観から生じた信念)
――――――――ここまではそれぞれの心の中で起こっている―――――――
第3段階 表出された選好レベル(それぞれの信念によって導き出された意見・表現。こ     の時点で、お互いの価値観や信念に基づいて対立や衝突が表面化する)

 対話における合意形成の特色は、第1階における価値レベルにおいて相手を理解し、相手の価値の正当性を認めることにある。認めるということは、それを受け入れるということではなく、相手がどのようなプライオリティによってその価値を優先づけているかを理解することである。
 その上で合意形成を目指すわけだが、意外なことに、「対話の目ざす合意形成は「理由を含めて完全に合意することではない。」のだ。「異なる理由に基づく同意」でもよしとする。それが対話による合意形成である。

メタ・コンセンサスの第4段階は コンセンサス(根拠を問わない同意」)である。

 最終決定した内容について、「双方が合意した理由が違っていてもそれを明らかにした上で、問題としない」、ところに意義があるようだ。「対話は合意を目指すものではあるが、合意形成を保障するものではない。」という考え方に、なるほどそういうことかとまたまた目から鱗が3枚。

 これを聞いて、マーコードモデルALにおいて、問題の再定義で問題に合意しないままに進めることが腑に落ちた。「合意」と「同意」の違いなのだな。理由まで含めて一致した解決策にすることが合意。理由はどうであれ納得して結果を受け入れることが「同意」ううむ。深いなあ。

 このような話の後に、ビジュアルワークや発問のロールプレイなど様々なワークとともにフィンランドメソッドを体験した。ここでは書ききれないほどの多くの刺激を受け、対話の奥深さとフィンランドメソッドの魅力にとりつかれた2日間だった。

 北川さんは、教育の世界の自分の話がビジネスにどれほど役に立つのかと懐疑的だったが、その考え方は、どの分野でも重要な基本的な部分であり、対話(ダイアローグ)は、これからの組織開発の重要なキーワードだと確信した。北川さんの活躍の場はどんどん広がっていくだろう。

北川さんと平田オリザさんの対談「日本には対話がない」は必読の一冊です。