qualiadiversity’s diary

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今必要なのは「メンタリング」それとも「スポンサーシップ」?

5月末にあったギリシャのGSWレポートをGEWELのブログに投稿。メンタリングとスポンサーシップについてレポートしています。

---以下GEWELのブログに投稿した原稿と同文です---

日本でも、女性のリーダーシップ開発や管理職登用の施策として年々実施する企業が増えているメンタリングであるが、GSWにおいてもその関心は高く、毎回人気のセッションである。
今回のテーマは、「Mentoring vs. Sponsorship」。マクドナルド(米国)グローバルダイバーシティチーフオフィサーのPatricia Harrisさんはwebメンタリングについて、Swiss-Re(スイス)のNia Joynson-Romanzinaはスポンサーシップについて語ってくれた。

オラクル(スペイン)ヨーロッパ所長Gloria Lorenzoさんはクロスメンタリングをテーマに昨年に続き2度目の登場。オラクル・アメリカンエクスプレス・コカコーラの3社で共同実施している「Cross-Company mentoring」についての発表だった。内容は昨年とほぼ同じなので興味のある方は弊社のHPを参照して頂きたい。クロスメンタリングに取り組む企業は徐々に広がっているようで、昼食で同席したダノン(仏)人事担当副社長Muriel Penicaudさんも、IBMと共同でクロスメンタリングを実施していると語っていた。

スポンサーシップについては、ハーバードビジネスレビュー(HBR 2011年2月号)でも「メンタリングでは女性リーダーは生まれない」というテーマで特集を組まれていたホットな話題。HBRの内容は、真に女性のエグゼクティブを増やそうと思うなら、メンタリングではなくスポンサーシップこそ有効だというもの。
スイスの再保険会社「Swiss Re」でダイバーシティ部長をしているNia Joynson-Romanzina さんもその点を強調していた。メンタリングは、女性に勇気や自信を与え自律的にキャリア形成し、主体的な行動力を醸成するものとして一定の効果を発揮している。
一方で、エグゼクティブクラスの昇進や昇格では圧倒的に男性が多いという現実。Niaさんは、そこにメンタリングの限界があると言う。それはなぜか?彼女は、女性についたメンターは、キャリアを進めるために必要な組織的な影響力を持っていない傾向があると指摘する。また、より上級職になるにはスポンサーなしでは不可能だが、従来のメンターは女性メンティを引き上げることに消極的な態度を示すことが多かったという。
メンタリング制度は表面的に女性の昇進に取り組んでいる姿勢を示しているだけで、現実の数字を変えることには必ずしも役立っていないのでは、という問題意識のもと、Swiss Reでは「スポンサーシップ」を意識したメンタリングに取り組んでいるそうだ。

この点は、私も大いに共感するところだ。一般的に女性向けに適用されているメンタリング制度の多くは、組織の次世代リーダを育成するリーダシップパイプラインとは区別されており、メンティの明確な育成支援計画があるわけでもない。あくまでも、メンティのキャリア開発や社会・心理的支援に主眼がおかれたモノになっている。そのため、より上位職への意向をもつ女性には物足りない制度になっていることも少なくない。

NiaさんはAdvocate(擁護者)とMentorの違いを列挙し、スポンサーとしてメンティを支援する重要性を説いた。
スポンサーとメンターの役割の違いをみると次のようなことがあげられる。メンターはロールモデルとして見本となる。精神的な支えとなりフィードバックやアドバイスを行う。社内政治について教えキャリア開発を支援する。一方スポンサーは、メンティの昇進・昇格のために最大限の影響力を発揮しその実現を助けることにコミットする。積極的にキーパーソンに引き合わせたり、挑戦的なテーマを与えたり機会を提供しその成果を見える化させることを支援する。また、時には他からの非難や中傷から守る役割も果たす。

女性が上位職につくためには、本人の努力だけでは限界がある。組織の論理や仕組み、暗黙のルールを知り尽くした強力な支援者(スポンサー)が不可欠なのだ。昇進に関しては男性も同様だと考える人は多いかもしれない。しかし男性中心の職場で少数派である女性が上を目ざそうとしても、グラスシーリング(ガラスの天井)がその道をふさぎ圧倒的にチャンスが少ないことは紛れもない事実だ。

ダイバーシティ・女性活躍を推進している企業で構成されるNPO法人J-winの調査では、調査企業の80社の中で、女性課長職は7.9%、部長は4.2%、役員に至っては3.6%という少なさ(2012年ダイバーシティセンサスより)。これらの現実を考えると、制度的なスポンサーシップの導入は、ポジティブアクション施策として非常に有効だと考えられる。

ここ数年、メンタリングは女性のリーダーシップの大きなテーマだったが、今回「スポンサーシップ」に視点が変わってきたのは、それこそが成果に向けたより有効な取り組みだと考える企業が増えてきた結果だろう。

現在、女性のキャリア開発やリーダーシップ開発を目的としてメンタリング制度に取り組んでいる日本企業も、今後は「スポンサーシップ」を意識した取り組みを検討する時期にきているのではないだろうか。

*Mentoring vs. Sponsorship セッションの詳細資料は、下記からダウンロード出来ます。
http://www.globewomen.org/summit/2012/Agenda%20with%20Presentations.html