qualiadiversity’s diary

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成長のために効果的なメンタリングとは?

 GSWでは3日間で8つの全体セッションと13の分科会が開催された。とりあげるテーマは大きく分けると女性のリーダーシップ、起業、小規模企業経営、 NGO活動、ユース(未来の女性)支援などがある。私は毎回リーダーシップの分科会を中心に参加しているが、その内容は、メンタリング、戦略的コミュニケーション、ワークライフポリシーと日本でもなじみの深いものばかりだ。
特に私が現在力を入れて推進しているメンタリングは見逃せないセッションだった。今回のテーマはEffective Mentoring for Professional Growth(成長のために効果的なメンタリングとは?)というもの。

スピーカーはソデクソ(米国)D&I担当のRohini Anand さん、T-Systems(南アフリカ)常務Mardia van der Walt-Korstenさん、オラクル(スペイン)ヨーロッパ所長Gloria Lorenzoさん、アメリカンエキスプレス(スペイン)テレセールス担当部長 Julia Lopezさんの4名。
オラクルのGloriaさん、アメリカンエキスプレスのJuliaさんからは、アメリカンエクスプレス・オラクル・コカコーラの3社で共同実施している「Cross-Company mentoring」について発表があった。プログラムの目的は女性の能力開発と革新を創り出すことである。たとえば、スペインで行われているケースでは、役員クラスの女性をメンターに、潜在能力の高いトップタレント女性をメンティに、各社3~5人を選抜し、重要人材のVIPプログラムとして実施されている。2010年に実施されたその内容は、1年間に5~10回にわたる面談ミーティングを行うというもの。異なる企業が共同することで社外の文化を知り、視野を広げメンティのさらなる能力開発を行うことが出来るのだ。このような業界を越えたメンタリングは、ロールモデルの少ない日本企業にとっても関心の高いプログラムではないだろうか。

日本で現在展開されているメンタリングは主に組織の中の年長者(メンター)が未熟なメンティ(主に女性や若手社員)を対象に行うものが中心。いわゆる Traditional mentoringだ。しかし、今回発表企業では Reverse mentoring(下位者が上位者のメンターとなるもの)やPeer mentoring(課題を共有する者同士によるメンタリング)、buddy mentoring(同僚・仲間によるもの)、E-mentoring(webを活用したもの)など、多彩なプログラムが展開されていた。個人的成長やジェンダーバランスへの配慮、知識の世代継承や異文化への理解などその目的も様々だ。メンタリングは第一に、メンティにとって最も効果があるものだが、当然メンター、組織にとっても利益がもたらされなければならない。ここで強調されていたのは、とりわけメンターにとってのメリットである。
メンターにとってメンタリングとは、自らのリーダーシップ力の促進、後継者の育成、ネットワークの強化、偏見への気づきを高める機会でもあるのだ。

メンティのキャリアの成功のためには複数のメンターを持つことが重要と説くのは ソデクソ(※)のRohiniさん。(※)ソデクソは世界80ヶ国で主に病院や企業の社員食堂などフードサービスや管理運営を手がける従業員380,000人(世界)のグローバル企業。
ソデクソUSAでは、「Spirit of Mentoring」プログラムを展開している。これは対象を3つの層に分類し、メンティをサポートするもの。管理職・専門職女性は基本的に非公式に行うが、次世代リーダーとなる女性には公式なマッチングを行い早期に育成する仕組みとして機能している。目に見える成果としては、離職率の低下、生産性の向上、従業員満足の向上がある。さらに、目に見えない効果としては、メンター・メンティ双方にコミュニケーション力や仕事満足度、組織貢献意欲の向上などが見られたという。

また、ソデクソEuropeが行っているのは「Reciprocal Mentoring(相互メンタリング)」だ。これは執行委員会のリーダーがメンターとなるもので、メンター・メンティ相互の恩恵をより強調した内容になっている。メンティは、キャリアへの洞察や組織文化への認識、課題への挑戦の機会が与えられ、それにより自信や変化の機会、組織への共感が生まれる。
メンターにとっては「組織の中に目の見えない障がい」に気づくきっかけとなり、改善のためのアイデアや変化を生み出すよい機会となっている。メンターからは「メンティは、より効果的なリーダーシップを発揮するための新鮮な視点を私に与えてくれた」「メンタリングを通して、前提を持たず忍耐強く協働していく手法を学んだ」「メンタリングは女性に対する私の不安を払拭させた。より挑戦的な環境を女性にもどんどん与えていきたい」といった声もあがっているという。

日本企業でもメンタリングへの関心は高まっており、(財)日本生産性本部実施の「コア人材としての女性社員育成に関する調査」でも育成施策としてメンター制度を導入している企業は16%、検討企業は6割に上る。一方でメンター制度導入がどれだけ個人や組織の成長・成果につながるのか、疑問視する企業もいまだに多く見受けられる。単なるOJTの延長やメンティ(女性)支援だけを目的に展開している企業では、組織に与えるインパクトが弱く本来の成果につながりにくい結果となっていると考えられる。
メンタリングは、メンティ・メンター双方の成長を促すとともに、それが組織によい影響を与えることで戦略的な人材育成プログラムとなりえるのだ。そのことを改めて確信したセッションであった。

*本レポートはNPO法人GEWELHPに寄稿したものです。http://blog.gewel.org/