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qualiadiversity’s diary

ダイバーシティ&インクルージョンな日々を楽しむヒントや情報を発信しています。

ワークとライフの境界線はどこにある?

土曜日に日本キャリアデザイン学会の関西支部研究会がありました。設立当時から会員になっているものの、ほぼ幽霊会員のごとき存在。でも今回のテーマは「ワークライフバランス」行かないわけには行きません。
発表者は関西大学社会システムデザイン専攻の森田雅也先生。経営学「人的資源管理論」がご専門で、自ら4ヶ月間の育児休業も取得された方。新しい気づきもあってなかなか面白い話でした。

印象に残っているフレーズと私の感じたことをいくつか紹介したいと思います。
●まずは、ロザベス・モス・カンターの言葉から
「組織は、従業員がまるで家庭や個人的な要望をもっていないかのように設計されている」 

まさに!部下の時間は湯水のごとく使える。いつでも自由に使えることを前提に仕組みが作られ、長時間労働、休日出勤、不規則労働が常態化しているのは間違いない。ある人が、家庭責任を負わない男性達を「ケアレス・マン」と称していたけれど、ケアレス・マンだらけの会社でWLBの実現が進まず、ワーキングマザーが働きにくい状況が続くのはある意味当然のことかもしれない。

●組織で働くことは本質的に他律的である。その上で仕事を遂行する上での自律性が成果や意欲につながっている。WLBでは、さらに仕事の領域と生活の領域の境界をどう越えるか、境界をどこにおくか、という境界決定の自律性をどう確立するか、が重要となる。

 仕事や生活を自分の時間のどこに位置づけるか、仕事と生活の境界を自ら決めることが私たち労働者にも厳しく求められる。そういう意味で、WLBは誰でも実現できるものではなく、自律的に自分の人生を考え行動する人にのみ恩恵がある、という。それは本当にそうなのだ。だからこそ、個人がキャリアデザインやWLBのあり方をきちんと考える必要があるといえる。

●「WLBは生産性や利益向上につながるか」という問いに対しては、明確に因果があるとは言えない。しかし、相関があることは明らか。CSRや環境対策も20年前にはそんなことが企業価値に影響があるとは誰も考えていなかったけれど、現在それを無視できる企業は存在し得ない。

 私が関わる企業でも、WLB施策を実施するのはやはり「従業員満足度(ES)向上」が最も多い理由。それは結局、顧客満足度(CS)にもつながっており、長い目で見れば
強靱な企業体質にもつながっていくものだと考えられる。WLB施策によってコストがかかるとか、利益が減るのではという懸念を抱く企業には、Jカーブ効果を伝えるとよい
という話は大変参考になった。Jカーブ効果とは、施策のスタート時には初期コストがかかったり混乱がおこったりし、一時的にコストがかかるが、時間の経過と共に右肩上がりで成長していくグラフを指したもの。目の前のことだけでなく、如何に将来の利益をイメージしてもらうかが、一つのカギかもしれない。

●最後に最も興味深かったのは、行き過ぎたWLBは「仕事に没頭する自由」を奪うのではないかという懸念。
-仕事偏重の働き方を当事者が望んで選択した場合に、それを法によって是正するというのは、個人の価値観への過剰介入である-
という大内伸哉氏の文章を引用し、誰もが仕事と生活の調和を望んでいる訳ではなく、「仕事一筋」という生き方があってもいいのでは、という問題を提起された。

確かに同感する部分もある。私も30代はがむしゃらに働いていた。ちょうど子どもが小学校から中学にかかる時期。その時期仕事に没頭したからこそ、仕事に対する自信や覚悟が出来たとも言える。家事・育児・仕事、そしてNPO活動とやりたいことは全部やらなければ気が済まなかったし、それが出来る体力があると信じていた。しかし、加減を知らなかった私は30代前半と後半に2度に渡って肝臓疾患にかかり、仕事においても生活においても激しい落ち込みの時期があった。その経験から言えることは如何に仕事が楽しくとも、やはり適度な休息や余暇は心身の健康を維持するために不可欠だということ。自分が仕事に没頭してることで、誰かを犠牲にしたり何かのバランスが崩れてしまっては意味がない。この部分は今後さらに議論を深める必要があると感じている。

ともあれ、いろいろインスパイアされた話であり、また久しぶりに研究者の見解が聞けたのは貴重な経験であった。やっぱりインプットは重要だ。