qualiadiversity’s diary

ダイバーシティ&インクルージョンな日々を楽しむヒントや情報を発信しています。

インクルージョン・パワー 新たな視点をダイバーシティに活かそう

第6回GOLDシンポジウム参加レポート

9月19日(金)、麻布のアメリカンクラブで開催されたGOLD主催のシンポジウムに出席しました。18ヶ月毎にロサンゼルスと東京で毎回開催されるこのシンポジウムは今回で6回目。初回から毎回欠かさず参加しています。
その理由は、GOLD( Global Organization for Leadership and Diversity )代表理事の建部博子さんにあります。
18歳で単身米国に渡り、カリフォルニア第一勧業銀行取締役兼副頭取にまでなられたスゴイ方ですが、気取らず飾らず多くの人を魅了する素敵な魅力をお持ちの方。初めてお会いしたときからずっと勝手にメンターとして尊敬しています。
今回のテーマは「インクルージョン・パワー」
21世紀型リーダーのあり方を第一線で活躍する幅広い分野の日米女性・男性リーダーから学び、実践へのステップに繋げるというもの。非常に内容の濃い素晴らしいシンポジウムでした。

【チャレンジは機会、アイスクリームはまず味わうこと】
冒頭の挨拶は駐日米国大使のキャロライン・ブービエ・ケネディ氏。写真撮影は公式メディアしか許可されていませんでしたが、あちこちでフラッシュが(^_^;)。
まあ、時の人なので仕方ありませんね。間近に見るのは2度目ですがユーモアと知性にあふれたその存在感、一気に惹きつけられてしまいました。
女性経営者パネルセッションには、元世界銀行多国籍投資期間長官で現在ANA,サントリー三井物産社外取締役を務める小林いずみさんと、伊藤忠商事執行役員法務部長の茅野みつるさんが登場。ファシリテーターは、プルデンシャルファイナンシャルのチーフエシックスオフィサーの土井・ケイ・ローヤンさんです。
茅野さんが執行役員になったのは46歳の時だそうですが、現在上場企業における管理職の平均年齢は次の通り(係長39.6歳、課長45.1歳、部長50.7歳)。茅野さんの昇進がいかに異例だったかがわかります。
二人とも決してぎらぎらと昇進を狙うタイプではなく自然体ででも本気で仕事に取り組む姿勢がひしひしと伝わってきました。「チャレンジは機会でもある」と昇進打診を前向きに受け止め、与えられた役割と期待に見事に応え結果を出す二人の姿は、女性だから・男性だからでなく、心底こういう人になりたいな~と思わせるものでした。
昇進に消極的な女性達には、アイスクリームの味を知らずに嫌うのではなく、まずは食べてみましょうと勇気づけていたのが印象的でした。

ダイバーシティ経営の視点を持つトップ達】
男性の視点で紐解く「リーダーシップ、共同参画、パートナーシップ」は、男性経営者が語るダイバーシティインクルージョンです。
シスコシステムズの代表執行役社長の平野康文さんは、自分が女性メンティを持った時の経験について「どうしても自分と同じ(男性型の働き方モデル)を女性に期待してしまって最初はうまくいかなかった」と語ってくれました。その人本来の持ち味を引き出すのがメンターの役割。女性のリーダーシップ開発で気をつけるべきポイントです。
製薬会社バクスターの社長ジェラルド・リマさんは自社で推進している「Japan New Initiatives』の内容を紹介。その4つの柱は次の通りでした。
1.Natural Working Mom
 スーパーウーマン的働き方からワーキングマザーとして自然体で継続的に働き続 けられる会社に
2.From IKU Men to IKU Boss
 イクメン(育児をしながら働く男性社員)を増やし、イクボス(育児をする社員 を支援する上司)になろう
3.Flexibility for no reason
 テクノロジーや智慧の共有・協働により柔軟な働き方を創る
4.Relocation to Toranomon-Hills
 新しい働き方を実現するための新事務所 
 *4だけは正直??ですが、他の内容は納得ですね(^_^)
バクスターには特別な思い入れがあったので、社長の話はひときわ感慨深いものでした。
それは、1999年の秋のこと。
米国のダイバーシティ企業を視察した帰りの飛行機に機内誌としてフォーブスというビジネス雑誌が置いてありました。
表紙には赤ちゃんを抱く男性と「Daddy Stress」の大きな文字。
その特集の内容は、共働き世帯の増加により育児を共に担うワーキングファザーが増え、育児ストレスを抱える男性が増加。ランチを抜いて育児セミナーに参加する父親達の姿を紹介するものでした。表紙の男性は当時のバクスターの社長で、育児をしながら社長業をこなしているという紹介でした。
男性の育児ストレス! 
今でこそ「イクメン』なる言葉が広がっていますが、当時
は過労死・サービス残業が当たり前の時代。アメリカはすでにここまできているのかと衝撃を受けたのでした。
最近、家事・育児に積極的な男性が増える中で、こういうセミナーが続々と開催されていますね。日本もそういう時代になったのだなあと思った次第。
しかし、このシンポジウムに登場する男性達は、皆さん柔軟で行動力のある人ばかり。ダイバーシティインクルージョンが進むとイケテル男性も増えるという証拠のようです。
*フォーブスの記事は下記から読めます http://www.forbes.com/global/1999/0906/0217092a.html

【グローバルシチズンとして~第4の波を考える】
米国在住のダイバーシティコンサルタント K.IWATA氏とジョンソン・アンド・ジョンソン副社長兼チーフ・ダイバーシティ・オフィサーのアンソニー・カーター氏のセッションはToward the "Fourth Wave" of Business in the 21st Century
アルビン・トフラーが「第3の波」を出版し世界に衝撃を与えたのは1980年。それから30余年をすぎ、いよいよ「第4の波」がやってきたようです。
第2の波は Industrialの時代 成長や利益に価値がありダイバーシティは無視された時代です。
第3の波は、Post industrialの時代 創造や学習に価値がありダイバーシティの重要性が認識されるようになりインクルージョン(受容)が始まりました。
そして第4の波は、Technology and global well-beingの時代。
global stewardとしての行動(未来に向けていかに貢献できるか)が重要となります。
多様性はFully embraced and integrated, part of the "DNA" DNAの一部として組織に中に息づいています。
第4の波が押し寄せた時、日本企業はそれに耐えられるでしょうか。
J&Jのアンソニー氏がそれをしっかり見据えた企業戦略を力強く説明される姿が印象的でした。さすが「Our Credo」を持つ会社。
1982年のタイレノール事件を知った時もその素晴らしい対応に衝撃を受けましたが、やっぱりビジョナリーカンパニーには違うなあ、と感銘を受けました。
まだ知らなかった「第4の波」ダイバーシティとの関連で考えると非常に面白い内容でした。
http://www.amazon.com/The-Fourth-Wave-Business-Century/dp/1576750027

ダイバーシティネットワークの重要性 ERGsを創る】
「先進企業のD&Iへの取り組みと効果」では、MUFGユニオン銀行ダイバーシティインクルージョン副社長のジャクソン・ティーサ氏とMGMリゾーツインターナショナル上級副社長ジェームス・A・フィリス氏が、自社事例を紹介し、グループで「Employee Resource Groups(ERGs)」について、自社での展開をディスカッッションするというもの。
ダイバーシティを推進する上で、当事者同志のコミュニティを創るのは米国では一般的に行われていることだ。当事者が主体的に自らの問題を考える上でも効果があるし、マイノリティの視点を商品開発やマーケティング、プロセス改善に組み込むことで様々なメリットが得られます。

しかし、日本人同士の議論はなかなか進みませんでした。その大きな要因は,ERGsのメリットがわからないと言う前に、前提となる当事者同士のコミュニティをつくることにまず大きな壁があるからです。
喫緊の課題である女性活躍推進でさえ、女性同士のネットワーキングやコミュニティづくりの難しさを語る担当者は少なくありません。組織化する、ネットワークを創るためには、当事者意識や問題を共有し合う環境作りが不可欠だが、組織の中に点として存在しているため,お互いがその存在を認識しにくかったり、分断されて対立していたり、少数であるが故の恩恵を被っている人、あるいはある属性でカテゴリーされることに違和感を持つ人も多いのです。外国人、障害者もそうだし、LGBT性的少数者)の社員にいたっては、自分がLGBTであるということを口にすらできない現状があります。

 そのような中で、ネットワークやコミュティをつくり、その力を活かそうという取り組みは、随分遠い将来の話に聞こえかもしれません。しかし、私自身はダイバーシティ推進をサポートする中で、ERGsの重要性や必要性を痛感しており、なんとかそのような場を組織の中に創れないかと考えた時でもあったので、非常にタイムリーなテーマでもありました。

ERGsを組織にどのように導入し、その効果をどう知らしめるか、考えるよいきっかけとなったセッションでした。

手遅れになる前に、ダイバーシティに取り組もう!

少し前に出た日経BPムック「女性部下育成の教科書 にカルビー社長松本晃さんの記事がありました。

ダイバーシティで会社は成長する。早く始めないと手遅れになるよ。

ダイバーシティをやらないと会社はよくならないし、もうからない。世界ではもはや当たり前の常識。でも日本ではまだまだ非常識。業績悪化したときの犯人扱いされてしまう。だから意地でも業績よくしようとがんばっている。

ダイバーシティが業績向上に結びつかないのは経営者が本気じゃないから。

ダイバーシティを乱暴にいうと「使える人は誰でも使え」ということ。誰でもよくなりたいと思っている。そういう従業員と会社の要求を最適化してマッチングするための活動。

・日本で広まらないのは、男だけの方が楽だから。似た人が集まるサークルの方が楽に決まっている。ただ、僕が楽でいることと、僕が会社で果たす役割は違う。

ダイバーシティを推進する上で重要なことは経営陣が強くコミットすること。さらにコミットするだけではなく数値目標に落とし込むこと

・女性の方が男性より優秀だとも思わないし、逆もない。男女間の能力の優劣に何の因果関係も相関関係もない。

・推進のステップは、理解→納得→行動 
100人いたら理解して即行動するのはほんの数人、面従腹背の人もいるが世の中そんなもの。それでもやる。
 
ダイバーシティは組織や制度を変えるのでそれなりに犠牲を伴う。お金もかかり義務も増える。これは将来への投資。
(管理職に)
・あなたが未来永劫今のポジションでいいならやる必要はない。しかしもっと上のポジションをめざすならやった方が得。

いやいや、はぎれがよくて明快で、すかっとします。
このインタビューを読むとなぜ日本企業がダイバーシティ&女性活躍に二の足を踏むのか不思議に思えてきます。

J&J時代にダイバーシティの重要性を痛感。
2009年に社長に就任以来、女性活躍とダイバーシティに力を入れ、5期連続の増収増益を達成した言葉には説得力がありますね。

http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/226000.html

GIVE&TAKE 与える人こそ成功する時代

ずっと積ん読だった、アダム・グラントの「GIVE&TAKE 与える人こそ成功する時代」をようやく読了。著者は1981年生まれ。ペンシルバニア大学ウォートン校の史上最年少終身教授だそうで、FBでも皆さん話題にしていたが、期待通りの本だった。

アダム・グラントは人間の思考と行動を次の3つに分類している。
・ギバー 与える人
・テイカー 受け取る人
・マッチャー バランスをとる人

3つのタイプの本質的な違いは、ギブとテイクのどちらが先に来るかということ。
テイカーは、テイク&テイクン
なんでも自分中心の考え、自分の利益を得る手段としてのみ「相手にギブする」テイクという目的を達成する手段として有効だと考えれば、積極的にギブすることもある。
ギバーはギブ&ギブン
まずギブしようとする。真っ先に相手のことを考え、その時点でテイクが目的にあるわけではない。みかえりなどなしにまず人に与える。その結果はからずも「どこかからお返しをもらえる」
マッチャーはいつも頭の中にバランスシートを持っている。自分と相手の利益・不利益をそのつど公平にバランスし、ギブ&テイクの帳尻をあわせようとする。

与える人が成功する というロジックは 現象としておきるまでに非常に時間がかかるという。だから、時間的に鷹揚な人でないとギバーにはなれないらしい。
テイカーやマッチャーは自分が誰かにしてあげたことを「損得勘定」に置き換えて、司祭漏らさず自分の記録ノートにつけているが、ギバーは記録よりも「記憶」を重んじている。だから、時間を経ても人間関係のつながりを再構築することができ、そこから恩恵を得ていく。ギバーにとって恩恵とは「思いがけず来るモノ」であり、事前に期待したり損得案上するものではない。
成功するギバーは自己犠牲ではなく他者志向性を持っている。
他者志向になるということは、受け取るより多くを与えても決して自分の利益は見失わずそれを指針に「いつ、でこで、どのように、だれに与えるか」を決めること。

ギバーだから誰でも成功するわけではない。与えすぎて燃え尽きてしまう人も少なくないようだ。
アダム・グラントは、100時間は「与える」うえでのマジックナンバーだという。
ボランティア活動の100時間ルール。年間100時間から800時間ボランティアをしている人は、年間100時間未満、もしくは800時間以上している人よりも幸福度と人生の満足度が高いという。このラインを限度に設定しておけば、大きなパワーが得られ、疲労感が最も少ないそうだ。
もし燃え尽きそうになったら、周囲からサポートを受けること。それこそが燃え尽き防止の強力な特効薬だそうだ。FAJの運営メンバーに聴かせたい言葉(^_^)

私自身、Give&Give&Giveを信条として生きているので、この本にはとても勇気づけられたぞ~。

女性リーダー育成の最前線!

リクルートワークスの最新号特集は

「女性リーダー育成 半歩先行く 世界のリアル」
スイス・ドイツのグローバル企業の視察から見る 女性リーダー育成の最前線です。
女性活用では世界の劣等生である日本が変わるヒントが満載です。リクルートが提案する「女性リーダーをめぐる日本企業の宿題」にそって、気づいたことを補足しながら紹介します。

1.入社から5年でジュニアマネジメント層へ
 ・5年で3部署を経験させる、成果が出たら早めにリーダー的仕事をさせる
*女性の場合、結婚・出産前にやりがいのある仕事を経験することが、その後のキャリアに大きな影響与えることは実証済み。是非早めに育成をしてほしいですね
例;ダイムラーでは男女の別なく評価せよというメッセージを常に発信し続けている。女性部下の支援を怠ったり昇進人数が目標到達しないと賞与に影響するそう。トップの強いコミットは強制力となる。ダイバーシティはHRのトピックではなくビジネスの要請。

2.次の10年、30代で管理職へ
・2年を1単位(1モジュール)と考え、標準5モジュール(10年)で管理職に登用する
*大手企業だと男性でも役職を手にするのが30代後半や下手をすると40代になるという課題がありますね。ここをどうクリアするかが課題。中小企業の方が早いかも。やる気のある女性は失敗を気にせずどんどんチャレンジさせてほしいです。
ジョインソン氏は昇進に必要な3要素「PIE」 P=Performance(成果) I=Image(イメージ) E=Exposure(露出)についても紹介。
露出とは、影響力のある意思決定層に知られ、出会う機会を獲得すること。
女性は、仕事をきちんとがんばっていれば昇進すると思い込んでいる節があるがそれは幻想。昇進に影響ある人に「私は昇進に値する」というイメージを与えることも重要。なるほど、女性の謙虚さはここではマイナスになるってことですか。ただ、日本社会で男女ともに自己顕示が強いと嫌われるという風潮があるので、どう露出するかは難しいですね。
率直さ、素直さ、謙虚さってのが根底にあるってことでしょうか。

3.エグゼクティブへの道
・役員が配置やキャリア開発に責任を持ち(スポンサーシップ発揮し)女性エグゼクティブ誕生のためのパイプラインをつくっていく
*女性エグゼクティブになるには、残念ながら能力があるだけではだめ。単に経験を積んだり成果を出すだけでは誕生しません!メンタリングも限界があります。重要なことは、経営層がスポンサーシップを発揮して、成長を促進すること。これをえこひいきや逆差別という人もいますが、これまで「マイクロインイクイティ(小さな不公平・不平等)」に苦しんできた女性にはポジティブアクション的施策は必須。それに、口には出さねどスポンサーシップのおかげで役員になった男性達も意外と多いのでは?
例:IMDでは女性リーダー育成プログラムを開発するに当たって、女性だけが参加する意義を明確にし「リーダーに必要な能力・スキルのうち男性よりも女性のほうが苦手としていること、女性がそれを学ぶことでよりよくリーダーシップを発揮できるもの」にフォーカスした。その一つが「オーセンティックリーダーシップ」男性のまねをするのではなく、偽りのない状態で発揮する本心からのリーダーシップを開発するというもの。真のリーダーシップは自分に自信を持つところから始まる、という言葉に深く同感。

4.育児との両立支援
・育休は短めに。時短も最小限に。フルタイムで働くことを支援。鍵は、時間と場所にしばられないフレキシブルさ。業務の難易度を下げずに働き続けられる仕組み作りを。
*どんなに仕事軸をしっかりもった女性でも、多かれ少なかれ育児の悩みをもっています。その影響は男性の比ではありません。だからこそ、逆転の発想が必要です。育児期間をマイナスととらえるのではなく、いつまで育児中心?その期間をどう過ごす?その経験をどう活かす?という視点を女性も組織も持つと、育児中女性に対する異なる戦略が見えてきます。
例:出産・育児というライフイベントで昇進やキャリアに慎重になる女性は多い。スイス再保険のジョインソン・ロマンツィーナ氏は、出産・育児と管理職昇進が二律背反にならないことが重要と指摘。仕事の単位を2年で1単位とモジュール化し、育児休業は1モジュールとして出産と育児に当てると割り切る。
昇進の基準を超えていれば産休中でも昇進はありえる、といいきるジョインソン氏。育休復帰後すぐ管理職に登用されるってインパクトありますね。

日本の育児休業期間が長すぎるという意見には大賛成。両立しながら働くのは確かに大変ですが、3年も本来の仕事から離れていてはキャリアの断絶につながってしまいます。
育児をしながら仕事の質を落とさずに働き続けられる仕組み作りが急務です。

まだまだ課題の多い女性リーダー育成ですが、変化の兆しも見え始めています。
日本企業の未来に、女性リーダー不在はありえません。取り返しのつかない状態になる前に一刻も早く手をつけましょう。気づいた組織から一歩前へ!

企業変革の核心 否定論者の攻略法

企業変革8つのステップで有名なジョン・P・コッターの「企業変革の核心」~このままでいいをどう打ち破るか~を久しぶりに読み返した。
ダイバーシティ推進はまさに組織変革と同義語であり、コッターの8つのステップはとても役に立つ。重要なポイントは「危機感」健全な危機感をどう持てるかだ。

変革は常に健全な危機感を抱くことから始まる。

危機感についてなるほどと思う文章。
・危機感というのは、目の前に危険があるから生まれるのではない。現状に安住することの危険性を認識し「このままではいけない」と強く感じることから危機感は生まれる・
・危機感は放っておいて生まれるものではなく生み出すものであり、火を燃やし続けるにはいつも気をつけて必要に応じて薪をたさなければならない。

本物の危機意識を高める基本戦略と戦術はわかりやすい。
<基本戦略>
・頭(理性)と心(感情)の両方に訴えかけ、目を覚まさせ、行動を促す
<4つの戦術>
・外を内に呼び込む(内の認識と外の現実との乖離、現状を明らかにする。外の変化を伝え実感させ、体験させる)
・危機感を行動で示す(重要度・優先度の低いことは切り捨て、危機感を自らの行動で表す)
・危機を好機と見なす(危機を逆手にとり、自己満足を打ち砕く絶好の機会にする)
・変革否定論者に対応する(現状維持人間は退場させる。無力化する)

中でも、変革否定論者への対応は参考になる。
ここで変革否定論者と懐疑論者を区別しているが、なるほどという内容。両者をよく混同し一律に扱ってしまうことがあるが全く似て非なるモノだな。

<過去の事例>
懐疑論者:過去にうまくいったから今度もうまくいくとは考えない
否定論者:過去の失敗例を上げて阻止しようとする
<情報収集>
懐疑論者:信頼できる情報が十分にないときに態度を保留する
否定論者:本心では裏付け情報など望んでいないが、公の場では行動を起こすにはもっと
情報が必要だと執拗に主張する 
<情報分析>
懐疑論者:おおむね論理的に分析するが、リスクを警戒するあまり大量のデータを集めな
いと安心できない
否定論者:自分に都合のいいデータだけを選んで現状維持の論拠とする
<積極性>
懐疑論者:自ら動くことはあまりなく「納得できる論拠を示してくれるなら賛成しても言い」と考えている
否定論者:自ら攻撃を仕掛け、表でも裏でもさかんに破壊工作を行う
<影響力>
懐疑論者:周囲をうんざりさせる。変革の足を引っ張ることもあるが、むやみな熱狂を阻止する役割を果たすこともある。
否定論者:現状肯定を助長させる。不安を煽る。変革に向けた行動を邪魔し、危機感に水を差す。きわめて危険な存在になり得る。


コッターは、頑固な否定論者を仲間に入れようとするのは時間の無駄だという。「仲間はずれ」という方法も膨大なエネルギーを使う割に下策になりやすい。否定論者は思いのほか手強い。現状肯定論を後押しし、危機意識に水を差し、未来に向けた行動を妨害することにかけては超一流である。
しかしいかに頑強な否定論者といえども難攻不落の砦ではない。

その有効な攻略法としては次の3つを提唱している。
・邪魔者を邪魔立てする
  こちらから邪魔をして何もできないようにする。邪魔立てするときは徹底的に。中途半端は逆効果。
・組織の外に追い払う
  否定論者はまず自分の意見を変えない。あの手この手を使ってでも最後は辞めさせるべきだが、それをできる経営者はあまりにも少ない。
・彼/彼女らの行動を白日の下にさらし、周囲の圧力で辞めさせる
  小粒の変革否定論者によくきくやり方。穏当なやり方でその行動を大勢に知らしめ、周囲の圧力にゆだねる


読んでいくうちに、ダイバーシティ推進(特に女性活躍推進)へのバッシングを強めている人達の顔がちらついてきた。

彼らは懐疑論者か否定論者か?どうもこのリストに当てはまると否定論者のようにしか見えないが・・・・。さて、ではどう攻略するか。こりゃかなり周到な戦術が必要だな。

これまで何度も「女性の時代到来」と言われたけれど、成果も出せないうちに否定論者に変革の翼を折られてきた。そろそろ本気にならないと本当に世界から取り残されてしまいそうだ。
しっかりとした戦略や戦術を持たずに戦ってはいけないのだ。

コッターの伝えてくれたメッセージをしっかり胸に刻んでおこう。

<未来は今日から始まる>

・できることからすぐに/明日ではなく、今日/誰かではなく私たちが/

                     企業変革の核心 ジョン・P・コッター著 日経BP社より
 

フューチャーセンターをつくろう

「フューチャーセンター」「フューチャーセッション」に関心を持つ人が急増している気がする(少なくとも私の周りでは)。フューチャーという言葉には間違いなく人を魅了する何かがある。けれど単にそれだけではなさそうだ。

フューチャーセンター(FC)を世に広めた野村恭彦さんの著書「フューチャーセンターをつくろう」を読むと、これが社会や組織を変える大きな変革装置であることがよく理解できる。何かを変えたいという強い意志、熱い想いをもった人にとって、FCは大きな可能性を秘めた仕組みなのだ。だからこそ、多種多様なテーマでFCが立ち上がり、動き始めているのだろう。

  今年も5月31日(金)~6月8日(土)までFUTURESESSION WEEKが開催される。
  全国各地で一斉に多様なテーマで開催されるフューチャーセッション。興味のある人は是非参加してみて欲しい。何かをしたい、変えたいと思っている人には、きっとヒントが見つかる場になるはず。

「フューチャセンターをつくろう」の要約はこちら。

【フューチャーセンターとは】
・フューチャーセンター(FC)は、北欧の知的資本経営から生まれた「未来の価値(知的資本)を生み出す場(センター)」である。知的資本は、人的資本・構造的資本・関係性資本の3つからなる。FCは人が成長し、アイデアが創出され、人のつながりが生まれる場である。

・FCは、「対話のための専用空間」でもあり「人と人とのつながり」でもあり、「企業や社会の変革装置」でもある。FCは未来の不確実性に立ち向かうための装置に他ならない。

・FCで行われる活動は、私たちが「人として」社会や市場経済と向き合い、協力し合って変化を起こしていくための、本質的な対話と協調である。

・企業もコミュニティも「仲間が集まって対話をしているだけにとどまらない、開かれた関係性を次々と生み出していく場」を必要としている。

・FCの魅力は、新しい商品やサービスを生み出す企業イノベーションのワクワク感と、世の中にある問題の解決をめざした社会イノベーションのホカホカ感を同時に味わえるところにある。

・FCのもたらす最大の価値観の転換は、「企業のイノベーターが、社会問題を解決するパワーを持っている」こと。社会問題こそ、企業のイノベーション活動の中心に置かれるものになる。

・FCは、「創造的(クリエイティブ)」な発想でセクターの壁を超え、「対話(ダイアログ)」によってセクター間の新たなつながりを生み出す。

・誰もが社会イノベーションの一翼を担う力をもっていると同時に、誰もが社会イノベーションの阻害要因にもなりうる。FCの目的は、未来を自分達の力で創り出すこと。

【フューチャーセンターの思想】
・FCを立ち上げ成功に導くためには賢慮型リーダシップの6つの能力が必要。
  1.卓越した「善い」目的をつくる能力
  2.他者と文脈/コンテクストを共有して場を醸成する能力
  3.個別の本質を洞察する能力
  4.個別具体と普遍を往還/相互変換する能力
  5.その都度の状況のなかで、矛盾を止揚しつつ実現する能力
  6.賢慮を育成する能力

・FCを成功させるための6つの原則
  1.FCでは、想いを持った人にとっての「大切な問い」からすべてが始まる
     →問いの質を高めるためには、常に社会全体のことを考えて行動すること
  2.FCでは、新たな可能性を描くために、「多様な人達の智慧」が一つの場に集まる
     →合理的な人生は人脈を狭める。できるだけ多様なコミュニティに属しよう
  3.FCでは、集まった人達の関係性を大切にすることで、
    効果的に「自発性」を引き出す
     →「奇跡」を起こす上で最も重要。
    できるだけ少人数に分かれて傾聴し、関係性を深める
  4.FCでは、そこでの共通経験やアクティブな学習により、
    新たな「よりよい実践が創発」される
    →実際にやってみることで、思いもよらないアイデアが生み出される
  5.FCでは、あらゆるものを「プロトタイピング(試作)」する
    →とにかく目に見えるかたちに表現してみる
  6.FCでは、「質の高い対話」が、これからの方向性やステップ、
    効果的なアクションを明らかにする
    →質の高い対話には、「やらねばならないこと」ではなく
   「一緒にやりたいこと」を生み出す力がある

・FCディレクターは(FCD)、FCのミッション、扱う問題の領域を決める。FCDの役割はFC全体の活動を通して、組織変革や社会変革をデザインすること

・FCDは強い「想い」を持ち、他人の「想い」を引き出し、「パワフルな問い」を立てられる人でなければならない。
・FCDに必要な特性は「情熱・好奇心・共感力」それらを統合した人間的魅力。
・FCを立ち上げようと思ったら、あなた自身がFCDになることを真っ先に考えて欲しい。FCはハコモノではなく、あなた自身の世界観でつくりあげていく社会変革装置なのだ。

【FCセッションを開く】
・FCの方法論には、3つの方法論がある。
  1.対話の方法論
    相互理解・信頼の関係性を構築する、異質から気づきを得る、
    内省や思考を深める。未来のステイクホルダーとの対話が未来を創る。
  2.未来思考の方法論
    複数の未来シナオリを想定する、未来からバックキャストする
  3.デザイン思考の方法論
    体験から学ぶ、つくりながら考え学ぶ、形にしてみることで改善し続ける

・対話の場さえあれば、未来が創り出せるとは限らない。そこには強い意志と正しいプロセスが必要
・FCセッションを設計するための5つのステップ
  1.SELECT THEME(視野を広げてテーマを設定)
    ・従来の常識から離れる/過去・未来にスケールを広げ課題設定する
     /社会的なテーマに広げて課題設定する
  2.INVITE DIVERSE PEOPLE(多様性を確保して人集め)
    ・ステークホルダーに注目/専門性の違う人を選ぶ/横断的に人を選ぶ
  3.PRODUCE HOSPITALITY(非日常経験を演出)
    ・日常を持ち込まない/非日常を演出する
     (思いがけないこと、遊び、くつろげる雰囲気)
  4.FACILITATE DIALOGUE(主体性を引き出す運営)
    ・テーマへの深い共感を得る/相互に認めあう雰囲気
      /一つの答えを出すことにこだわらない
  5.FOSTER EXECUTION(参加者全員の深い気づき)
    ・実行への期待を高める/議事録で感情を含めた物語を伝える
     /過去の対話に立ち戻れる仕掛けを用意する

・FCセッション後の活動として、「対話の整理」と「フォローアップの行動」が重要。

ファシリテーターの役割】
・FCセッションの成功の鍵を握るのはファシリテーター(F)。Fはセッションの設計と運営に責任を持つ。「場を信頼し、集合的な知恵を引き出す力」を持つ
・Fは対話に「リズム」を与え、理解と解釈、発散と収束、共感と総合を繰り返す
・Fはテンションをコントロールする。「緊張感と張り」セッション中は、ヴァイオリンの弦の張りを適切に保つように、テンションに意識を向ける。大事なことは、「コミュニケーションの緊張感を下げること」と「コミットメントに対する張りを高めること」

【関係性を生む対話】
・FCセッションの4つのステージ
  ステージ1.尊敬と信頼に基づく関係性構築
  ステージ2.深い対話によるダイナミックな相互作用
  ステージ3.多様な方法論による未来思考
  ステージ4.プロトタイピングによる協調的アクション
・関係性の構築は新たな未来を創り出していく上での必要条件。Fの役割は「新しい芽がうまれてくる環境を整えること」

【FCの設計ガイドライン
・フューチャーセンターの6原則に対応した6つのガイドライン
  1.信頼感のデザイン
    ・想いをもった人の存在が不可欠。
     この問題を語るにふさわしい人だと参加者の誰もが思えれば
     セッションに対する信頼感が高まる
    ・F自身が、「この場に集まった人達には、この問題を解決する力がある」と
     信じ「必ず創発を起こす」という強い意図を持っていることが場に大きな影響を与える
  2.多様性のデザイン
    ・FCには多様であることをパワーに変えていく力を持つことが必要
    ・空間もファシリテーションも「インクルージョン(除外されてきた人々を
     包含する)」にデザインされていること。空間はできる限りユニバーサルデザインを施す。
  3.関係性のデザイン
    ・問題解決よりも人間関係を大事にしている場だということがわかるように、
     空間設計や「お迎えの仕方」を工夫する
  4.全体性のデザイン
    ・FCに来た知らない人同士が、お互いの壁を感じることなく
     全体で一つの場をつくれるようなデザインにする
  5.可視性のデザイン
    ・プロセスを含めてできるだけ可視化する。
     現れたアイデア一つひとつをしっかりつかみ取ることが大切。
  6.安心感のデザイン
    ・リラックスした雰囲気、安心して話せる雰囲気を創り出す
    ・Fの醸し出す雰囲気が重要

【開かれた専用空間をつくる】
・FCには、専用空間があった方が良いが、なければできないわけではない。どんな場所であってもう まく「場作り」を行えば、「よい場」をつくることができる。
・良い場とは何か。その場に来た人が真っ先に「ここは違う」と感じられること。まずは 美しいこ とが最大の基準。迷ったらどちらが美しいかで決めるとよい。次に大切なことは「意外性」が感じ られること。
・誰もがいつでもリーダーシップを発揮できる状態ができたら、あとはすべてを場にゆだね、楽しむこと。よい場は自然に立ち上がってくる
・FCは常に外部に開かれていなければならない。仲間うちでよい対話をして満足するだけでなく、関係性を広げていく方向に思考を巡らせる
・FCは、ただ対話をするだけの場ではなく「新しいコトを生み出す場」。新しいコトを創発するために「新しい関係者を招く」「過去ではなく未来を語る」ことに焦点を当てる

【FCによる変革】
・アクションにつながる3つの要因
  1.課題提起者が本気であること
    表層的なテーマだとしたら、何が本質的な課題かを引き出す。
    本当にやりたいこと、その情熱のありかを確認する
  2.実行力を持った参加者がいること
    セッション後に一緒に活動を進めて行ってもらいたい人を選ぶ。
    最初は前向きで意識の高い人をできるだけ選び、
    2回目以降は変わって欲しい人を巻き込んでいく。
  3.Fが強い意志をもって関わること
    場が変化のきっかけを求めているとき、Fは強烈な意思表示をする。
    主体的な人が出てきたらFのペースメーカーとしての役割は終わる。
    後は、自発的なイニシャティブに任せる

【未来のステークホルダーと出会う】
・FCの魅力は、そこが「未来のステークホルダー」と出会える場所であること
・誰を未来のステークホルダーに選ぶかは、あなたの意志。問われるのは想像力。
・未来人が集まり、未来ごっこをするのがFC。FCファシリテーターは、スティーブ・ジョブスのように現実歪曲フィールドに参加者を巻き込む(書評アルファブロガー橋本大也氏の言葉より)
・未来人とは、自らの感性と価値観を信じ、今を生きている人。未来のことを夢想している人ではない。
・新たに関係性をつくることが。自己変革の起点となる。
・最初に「未来のステークホルダーに対する意志」をもつところからすべてが始まる。


ビジョンや戦略で人を動かすのは難しいが、新しい人とのつながりは、一瞬にして人の行動を変える。その結果新たなビジネス・エコシステムが生まれる。このプロセスこそが、ソーシャル・イノベーションなのだ。

           「フューチャーセンターをつくろう」野村恭彦著 プレジデント社を要約

プログラムデザインは難しくも面白い・・・

 2月9日(土)、デザイン・クリエイティブセンター神戸KII+O:で開催された、FAJ関西支部イベント「ファシリテーションで〇〇〇を変える」。

今回のテーマは「Change」

 何かを変える・実現するためのファシリテーションの可能性について、みんなで考えようというもの。先日カンブリア宮殿にも出演した今話題のコミュティデザイナー山崎亮さんと、パナソニックで業務革新に取り組む今村加世さんの対談を触媒に、そこから導き出されたキーワードに基づき、各ファシリテーター達が1時間でプログラムをデザインしワークショップを展開するという流れ。3時間近くのワークをその場で設計して実施するというこれまでにない企画。しかも今回は山崎ファンが多く学生や若者などいつもと違った層が多い。FAJ非会員の比率も高く、設計する側は大変だろうなと思いつつ、何が起こるかワクワクした気持ちで参加した・
それぞれのセッションでの内容や話し合いはとても楽しかった。一方、プログラムデザインという点では、いろいろ考えることが多かった。それだけプログラムを設計するのは難しいということ。なので、その点を少し深掘りして振り返ることにする。


〇全体プログラムはストーリーを紡ぎ出していたか?

 ゲストスピーカー二人の対談内容とその後のワークのつながり、全体として「Change」というテーマとの整合性。プログラムの全体設計は、コンセプトやテーマ、目的、意図を中心に、終了後の到達イメージ・ゴールを明確にしながら、どのような構成で各パーツを紡いでいくのかを考えることから始まる。
「Change」が全体を貫く縦軸とするなら、横軸に何を持ってくれば、その実現に向けたストーリーが紡ぎ出されるのだろうか。ここでは話題提供者の二人が選らんだ7つのキーワードがそれにあたるのだろう。2人の話と7つのキーワード、そしてワークショップから出てきた成果、これらが一体となって一人一人の「〇〇〇を変える(Change)」へと繋がっていく。私の中ではそんなイメージが勝手にできあがっていた。

 話題提供者が選んだキーワードは ?つなぐ ?きっかけづくり ?変革リーダーの育成 ?自主・自立 ?若手育成・活用 ?反対派 ?楽しむ・遊びの要素 の7つ。
これらの中から、それぞれに自分のテーマを選びホームチームへと散らばっていく。そしてワークショップ後、再び全体会場へ戻ったが、そこではゲストスピーカーへの質問中心で、それまでのワークや7つのキーワードとの関連性は薄かった。最後はホームチームに戻ってグループごとに振り返りを行った。ここでは、みなイキイキとした表情でそれぞれの想いを語り共有し合った。一人ひとりが自分にとっての「Change 」を感じ取っていたようだ。このホームチームの一体感は200人規模では得られないものかもしれない。

 時間や制約条件のある中で、参加動機も期待もバラバラである200名近い参加者の満足度をすべて満たすのは至難の技だ。どこに重点を置くかは、どのような結果を生み出したいかにかかっている。
全体のつながりを強く意識していた私にとっては少々もやもや感のあるプログラムデザインだったが、このような流れもあるのだろうな。


〇1時間でプログラムを設計するというチャレンジ

 一方で、全体プログラムの中でも4時間近くをかけた、各キーワードごとのワークショップは、1時間でその全体を設計しなければならないというチャレンジグなもの。担当したファシリテーターは大変だったろうな。
 私が選んだのは「自主・自立」のセッション。参加者である私たちはのんびりとお昼を楽しんでいたが、ファシリテーターは必死の形相。なんせ、参加者の属性もわからぬまま、その場で出てきたお題を元に、ゴールを定めどんなツールを使ってどのように進めるかを瞬時に決めていかなければならないのだから。

「自主・自立」WSは、ペアワーク→グループワーク→全体共有→グループワーク→全体共有というオーソドックな構成。
グループ分けのアイスブレイクから始まり、「Change」と聴いて浮かんだお勧めの1冊を紹介するペアダイアローグに続く。これはこれで楽しかったのだけれど、「なぜこのテーマを選んだのか?」という問いを最初に共有してもらうと、もっとメンバー間の共有感や関係性が深まったのではないだろうか。
グループディスカッションの1つめの問いは「自主・自立するためのきっかけは?」というもの。このテーマで話し合い3つのキーワードとスペシャルキーワードを1つ発表する・・・が、発表になると会場が広すぎて、声が届かない。途中から椅子だけで近寄って話すスタイルに変更した。会場設営とレイアウトもワークに影響を与えるものだ。このあたりの臨機応変さは大切だ。
 
2つめの問いは、「他人に自主・自立してもらうためには何をすればよいか」
他人・・という言葉に引っかかってしまった。細かい点だが気になると、その前提や定義を共有したくなる自分がいる。与えられた問にどれくらいコミットできるかは、その後の話し合いにも影響を与えるもの。そこはこだわってグループで共有する。
シンプルだからこそ、どんな「問い」をたてるかが、場を大きく左右する。「問い」ってホントに重要だ。1回目と同様、各チームから代表者が発表するスタイルは、やはり内容が聞き取りにくい。チーム数も多いため時間もかかる。こういうときは、ギャラリーウォーク(ポスターセッション)のように、発表模造紙を壁に貼り、みんなでぞろぞろ見て歩くというのも面白い。全体共有が「共有」という機能を果たすためにどうすればいいか、そんなことも考えてみる必要がありそうだ。

 全体集会からホームチームに戻るという流れは、その場に以前とは違う雰囲気を生み出していた。グループメンバーの距離感が先ほどよりもグンと近くなった感じ。これは新鮮な感覚だった。そうそう、これって大規模なワールドカフェなのね。「お帰りなさい」「戻ってきました」というような暖かい空気が流れ、お互いへの信頼感や安心感が増して、その後の話し合いがグンと深まった気がする。

 最後に相談役からプログラム設計についてひもとき。その構成意図を聴いて「なるほどね」と納得した。事前にある程度想定していても、場に起こったことに身を任せながら柔軟にスタイルを変え、最後はめざすゴールに行き着く。口で言うのは簡単だけれど、実際やってみると本当に大変な事だと思う。
 
「全体をゆるい設計にし、出てきたものにあわせてプログラムをその場で作る」ライブ感たっぷりのイベントは、とてもチャレンジングでいろいろ気づきを与えてくれるものだった。いつもコンテンツに夢中になるが、久しぶりにプログラムの構成や意図に意識が向いている自分を発見。一度で二度美味しいフォーラムとなった。

 「プログラムデザインはかくも難しく、またしびれるほど楽しいものだなあ」とまた、その深みにはまっていく私なのだった。