qualiadiversity’s diary

ダイバーシティ&インクルージョンな日々を楽しむヒントや情報を発信しています。

対話とは、価値観の対立を前提に行うもの

フィンランド教育を普及促進している北川達夫さんによる「対話」の話は奥が深い。


 「対話」とは、広辞苑によると「向かい合って話すこと。相対して話すこと」となっているが、グローバルコミュニケーションにおける対話は、かなり異なる意味をもっているようだ。

対話とは・・
価値観の対立を前提とし、積極的に対立を顕在化させ、積極的に調和点・妥協点を見いだし、協生と協創の道を探る創造的課程 である。

 「価値観の対立を前提とし、積極的に対立を顕在化させる」という北川さんの話に目から鱗がまた1枚おちた。そうか、対話というのは、お互いの違いを知ることから出発するのか。A×B→AかBではなく、A×B→C(A‘+B’)となることが対話なのだ。特にAがA‘になるという変化が重要だという。つまり相手に触れることによって自分が変わる(自己の再組織化)によって、力を合わせて問題を解決しようという協生が生まれるのだ。

●対話の基本姿勢
 対話(ダイアログ)とは、「ダイア」(通る・流れる)と「ロゴス」(意味・言葉)を語源とするギリシャ語からきている。そのため対話の基本姿勢としてつぎのようなことが大事となる。

・徹底して言語化する。言葉にして初めて存在する
・知識と経験を共有する。言語化された意見・知識・経験は共有される(ただし、それ を持っているから優位な立場になるわけではない。言葉を個人から切り離すことが重 要である)
・戦わない 勝ち負けを基本とする闘技型民主主義には限界がある。対話にとって重要 なことは熟議型民主主義へ転換すること。

 振り返ると、ダイバーシティを推進する中でずいぶん闘技型を行ってきたように思う。しかし戦いを挑めば挑むほど、相手は頑なになりなかなか話が進展せずにもどかしい思いをしてきた。それに気づいて以来いつも心がけているのは、「太陽政策」でいくこと。相手の価値観や考えを受け入れ、その違いを認め合うことからスタートする。そうすることでお互いを理解しようという雰囲気が生まれるのだ。
それはまさに「熟議型」。心したい言葉である。

さらに、対話の基本として2つの考え方を学んだ。それは、エンパシーとメタ・コンセンサス。

・対話の基礎技能 エンパシー

 コミュ二ヶーションでは、相手の感情を理解することが不可欠だが、その技法は2つある。シンパシー(synpathy)とエンパシー(empathy)だ。
シンパシーは、同情、思いやりであり、相手の心情を情緒的に理解する、相手の気持ちがわかるというのが前提である。伝統的コミュニケーションにおいて重視されてきたものだ。一方、エンパシーとは、感情移入、共感能力である。相手の気持ちはわからないという前提のもとに、相手の状況を論理的に推察すること(自己移入)を意味する。グローバルコミュニケーションにおいて重要となる技法である。
フィンランドメソッドは、このエンパシーを徹底的に鍛えることを大きな目的としている。

 前回も述べたように、フィンランドではすべてを問題の解決ととらえ、小学校低学年で問題と解決の型を身につけることを重視する。
さらに、現実と結びつけるために、物語による問題解決を重視しているが、その基本パタンは、問題・解決例の提示→解決策の評価→他の解決策を模索するという流れになる。そのプロセスにおいて、常に自分だったらどうするか(エンパシー自己移入)を考えながら、一番よいと思う解決策をみんなで考えるというもの。

 北川さんは、シンパシー(感情移入)の状態ではエンパシーはできないという。解釈の積み重ねから推論を生み出し、推論から解決策が出てくるのであり、対話においては、エンパシーがより重要となるのだ。ただ、気をつけなければならないことは、自他の区別をしっかりもつこと。確固たる意志がないと流されてしまう危険があるという。


●対話の基礎知識 メタ・コンセンサス

合意(コンセンサス)を生むプロセスには4段階のメタ・コンセンサスがある。

第1段階 価値レベル(表面の対立の下にある価値を探る)
第2段階 信念レベル(それぞれのもつ価値観から生じた信念)
――――――――ここまではそれぞれの心の中で起こっている―――――――
第3段階 表出された選好レベル(それぞれの信念によって導き出された意見・表現。こ     の時点で、お互いの価値観や信念に基づいて対立や衝突が表面化する)

 対話における合意形成の特色は、第1階における価値レベルにおいて相手を理解し、相手の価値の正当性を認めることにある。認めるということは、それを受け入れるということではなく、相手がどのようなプライオリティによってその価値を優先づけているかを理解することである。
 その上で合意形成を目指すわけだが、意外なことに、「対話の目ざす合意形成は「理由を含めて完全に合意することではない。」のだ。「異なる理由に基づく同意」でもよしとする。それが対話による合意形成である。

メタ・コンセンサスの第4段階は コンセンサス(根拠を問わない同意」)である。

 最終決定した内容について、「双方が合意した理由が違っていてもそれを明らかにした上で、問題としない」、ところに意義があるようだ。「対話は合意を目指すものではあるが、合意形成を保障するものではない。」という考え方に、なるほどそういうことかとまたまた目から鱗が3枚。

 これを聞いて、マーコードモデルALにおいて、問題の再定義で問題に合意しないままに進めることが腑に落ちた。「合意」と「同意」の違いなのだな。理由まで含めて一致した解決策にすることが合意。理由はどうであれ納得して結果を受け入れることが「同意」ううむ。深いなあ。

 このような話の後に、ビジュアルワークや発問のロールプレイなど様々なワークとともにフィンランドメソッドを体験した。ここでは書ききれないほどの多くの刺激を受け、対話の奥深さとフィンランドメソッドの魅力にとりつかれた2日間だった。

 北川さんは、教育の世界の自分の話がビジネスにどれほど役に立つのかと懐疑的だったが、その考え方は、どの分野でも重要な基本的な部分であり、対話(ダイアローグ)は、これからの組織開発の重要なキーワードだと確信した。北川さんの活躍の場はどんどん広がっていくだろう。

北川さんと平田オリザさんの対談「日本には対話がない」は必読の一冊です。

 

オリジナルって何だ? アダム・グラントを読んでみた

 

ORIGINALS 誰もが「人と違うことができる」時代 アダム・グラント著 三笠書房

 

タイトルに惹かれたポチッとしたのに、そのまま積ん読状態になっていた本を引っ張り出しました。

 

ペンシルバニア大学ウォートン校で史上最年少(35歳)で終身教授になったアダム・グラントの前作。「GIVE&TAKE~「与える人」こそ成功する時代」は愛読書だけど、こっちのほうはパラパラめくっても、あまり感動が少なかった。なぜか?監訳者の楠木健氏が、巻末に書いているけれど、まさに「言われてみれば当たり前」のことが書かれているから、かもしれない。

楠木さんの監訳の言葉を拾うと、この本のおもしろさが伝わるかもしれない。(P369-382)

・本書のテーマである「オリジナル」とは、ものごとがこれまでとは違った形で生まれたり進んだりする端緒「およびそれを担う人」を意味している。

・アダムは、オリジナリティという概念がもつ2つの重要な特徴に光を当てている

  1. 「コンフォーミティ(同調性)」の対概念としてとらえている
  2. コンフォーミティは、「正しいこと」についての価値観を踏襲しその延長上に成果を達成しようとする思考と行動。オリジナリティは、これまでの価値観に逆らって新しいアイデアを推進し、最終的によりよい状況や進歩を生み出すこと。
  3. クリエイティビティ(創造性)と区別している
  4. 「オリジナルな人」とは、単にアイデアを思いつくだけでは終わらず、それをみずから率先して実行し、社旗や市場や顧客が受け入れる形で実現する人を意味している

 

とりあえず、私が勝手に気になったキーフレーズだけ並べてみました。オリジナルでありたい私にとって役に立つフレーズを。

特に最後の「怒りのコントロール」は最近のマイブームです(^_^)

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・オリジナルな人とは、「自らのビジョンを率先して実現させていく人」

・既存のシステムを正当化すると、心が落ちつくという効果がある。「感情の鎮静剤」

・必要なのは好奇心。「デ・ジャ・ブ(既視感)」ではなく「ブ・ジャ・デ」を体験すること。ブ・ジャ・デは、既知のものを目の前にしながら、新たな視点でそれを見つめ、古い問題から新たな洞察を得ること。

・ある分野で危険な行動をとろうとするなら、別の分野では慎重に行動することによって全体的なリスクのレベルを弱めようとする。

・仕事は静的な彫刻ではなく、形状を変えられる積み木のようなもの。

・自分の限界は、自分で設定していたに過ぎない

・オリジナルなことを実現して成功している人達の中身は、私たちとさほど変わるものではない。何が違うかというと「それでも行動を起こす」ということ。「失敗することよりも、やってみないことのほうを後悔する」

・知識がない場合は、じっくりと分析したときのほうがより確実な判断ができる

・直感が頼りになるのは、予測可能な環境で判断を下す経験を積んだときだけ

・真の熱意は、外側に表れる感情からはわからない

・起業家として成功するかどうかは、その要因の本質に、外向的か内向的かは何らかかわりがない

 

・ある対象に繰り返し接するほど、その対象をもっと好きになる 単純接触効果

・満足のいかない状況に対処する方法

どれを選ぶかは、コントロール(状況の決定権が自分にあるという気持ち)と、コミットメント(状況に関与したいという前向きな気持ち)にかかっている

ポイントは、自分が変化をも垂らすことができると信じているかどうか、変化を起こそうと思うほどの高い関心を持っているかどうか

 組織の害になる 組織の利益になる

・状況を変える   離脱        発言

現状を維持する  無視        粘り

 

他者や慣習に立ち向かうことをいとわないのは、えてして「とげのある人」だ。

 

行動をとるべきタイミング

いいアイデアは放置から育つ

先延ばしは制賛成の敵からもしれないが、「創造性の源」にはなる

 

飛び抜けて独創的なアイデアは、新鮮な視点で問題にアプローチした場合にもっとも発見されやすい

ゴルディロックスの理論 似たもの同士だから敵意を抱く

非常に似通っているもの同士のわずかな違いこそが互いのあいだに違和感や敵意と言った感情を生み出す原因になっている

他者の価値観を変えさせるのは難しいが、自分たちの価値観と相手の価値観がすでにもっておる価値観の共通点を探し、結びつけるほうがずっと簡単

交渉は、強硬派を話し合いから排除することが重要

世界を創造する人は、自主的に考える人であり、「好奇心が強い」「まわりに同調しない」「反抗的」という3つの特徴があるという

 

戦略的楽観主義 最高の結果を予測し、冷静を保ち、目標を高く設定する

防衛的悲観主義 最悪の結果を想定し、不安を感じながら起こりうるあらゆる悪い事態を予測しておく

 

防衛的悲観主義は、課題に対する確固たる信念があるときに貴重な鍵となる。しかし信念が揺らいでいると不安や疑問が裏目に出る恐れがある

強烈な感情を抑圧しようとするよりも、違う感情にすり替える方が簡単だ

ある行動を起こそうという十分な意志がないときは、ネガティブに考えるのは危険

ビジョンを伝えることも重要だが、最初に伝えてもあまり意味がない

 

「怒りのコントロール法」について心理学者ブラッド・ブッシュマンの実験。

被験者が書いた文章に対してこっぴどい評価を与える。起こった被験者に対して、1.感情を表出すか(いやな相手を思い浮かべサンドバックを思い切り殴る)2.気を紛らわせるか(サンドバックは殴るが、身体を鍛えているイメージを思い浮かべる)、3.コントロールする(サンドバックを使わず2分間静かに座っている)

結果は、感情を表したグループは一番攻撃的で怒りの時間も長かった。気を紛らわせてサンドバックをたたいたチームは「怒りのGOシステム」は作動するが他の対処法も考えられるようになる。感情コントロールチームは、ストップシステムが作動する。

 

「他者に対して」怒りを感じていると復讐心が生じるが、「他者のために」

怒りを感じていると、正義やよりよいシステムを作る動機になる

人を罰したいのではなく、助けたいのだ。

 

「オリジナルでいる」ことは、幸せに至る道としては、決して簡単なものではない。しかし、それを追い求めることの幸せは何者にも代え難いのである。

リーダーシップは危険だけど魅力的

あることがあって、久しぶりに読み返した、ロナルド・A・ハイフェッツの「最前線のリーダーシップ」~危機を乗り越える技術~。                                                                                                                                      

 リーダーシップには危険がいっぱい。困難な状況のなかで心の活力を保つにはどうすればよいか。改めてかみしめたいフレーズを備忘録的にメモしておきます。

なぜ、わざわざ波風立てるのか、これを成し遂げることをそれほど渇望するのか。

自己嫌悪、自己防衛、自己欺瞞、自己憐憫。理想のリーダーとはほど遠い自分の姿に傷つき心折れよろめきながらも、なお前に進むのはなぜか。

 

――神聖な心を保つことは、自分にとって意義あることを追求しながら、なおかつ無邪気さ、好奇心、哀れみを維持することである。――

深く心に留め置きたい言葉。

 

・リーダーシップを取っている人は締め出される 

リスク1 脇に追いやられる

リスク2 注意をそらされる

リスク3 個人攻撃される

リスク4 誘惑される

★リーダーシップは、変革に伴う痛みに敬意を払い、危機の兆候を認識するだけではなく、その危機に対応するスキルを必要とする。

 

<リーダーシップを発揮しながら生き延びる5つの方法>

方法1 全体象をつかむ

・バルコニーにあがり、出来事の背景にある力学に気づく

・技術的な問題と適応が必要な問題を見極める

・人々の立ち位置を知る

・言葉の奥に潜む「歌」に耳を傾ける

・権威者の行動を読む

 

技術的な問題---上に立つ人、権威ある人が既存の知識を適用する 

適応を必要とする問題---既存の問題を抱えた人たち自身が新たな方法を学ぶ

 リーダーシップは即興芸術である。包括的なビジョンや明確な価値観、戦略的プランがあったとしても、それは何の役にも立たない。効果的なリーダーシップのためには、目の前で起こっていることにうまく対処しなければならないのだ。自分自身のリーダーシップを維持するには、何よりもまず自分と自分が起こした行動によって何が起こっているのかを、その出来事が起こっている最中に知る能力がなければならない。

 

方法2 政治的に考える

視点1 パートナーを見つける

視点2 反対派を遠ざけない

視点3 自分が問題の一部であったことを認める

視点4 喪失を認識する

視点5 自らモデルとなる

視点6 犠牲を受け入れる

方法3 衝突を指揮する

グループ内において難問に取り組むとき、衝突は免れない。深刻で根深い衝突が発生するのは、強い思いが込められた別々の信念が組織の中に存在するからであり、そうした異なる視点は進歩の強い原動力となる。

リーダーシップを発揮する際に重要なのは、適応の作業を促す際に、別々の相違、熱意、衝突に取組み、またそれらの破壊的側面を最小化し、建設的なエネルギーを確保することだ。リーダーの仕事は、衝突を指揮することであり、人と衝突することではない。

1.適応を促す環境を確保する

 衝突の隠蔽(Yesを言いながらNoをする)という状態にないか?

 ミスや衝突を許容する場の創出が重要

2.熱気を調整する

  熱気は高すぎても人々は嫌気がさし、熱気を完全に押さえてしまいたくなるし、低  

  すぎても何も変化が起きなくなってしまう。「建設的な苦痛の範囲」をどうコント

  ロールするか。熱気の上げ方、下げ方を知る必要がある。

3.ペースをつくる

  急激な変化は反発を招く

  我慢強く情報をコントロールする

  将来像を見せる

  

方法4 当事者に作業を投げ返す

問題を引き受けず一歩引く勇気を持つ。

介入は短くシンプルにとどめる。観察する・問を投げかける・見解を示す・行動に移す

 

方法5 攻撃を受けても踏みとどまる

 自らの指導力を傷つけないやり方で、非難や怒りを甘んじて受けられるようにすることは、リーダーシップを発揮する際の課題の中でも、特にやっかいなものである。非難を受け止める能力を高めるためには、経験を積む必要がある。あなたの周りが怒りや緊張で煮えたぎっている時でも、自分自身を慎重に冷静に保てるように何度も訓練しなければならない。

友人や支持者からの非難は、反対勢力からの、ののしりよりもつらいことがある。

怒りを受け入れるのは神聖な仕事であると心得る。

自分が取り組んでいることに情熱を傾ける活動的な人々は、典型的には忍耐力をあまり持っていないことは確かだ、機が熟すまで行動を遅らせることは重要。

手強い問題に人々の注意を向けさせることは、こみいった難しい仕事である。

 

リーダーシップを発揮することは、あなたのイキイキとした活動を表現することである。しかし人々が心を失い自己防衛に走ると次のようなことが起きる

 

心の本質は無邪気さ、好奇心、哀れみだが、心を失うと、皮肉、傲慢。冷淡になる。そして表面的には 現実主義者、権威ある知識人、経験豊富な人 という名前をまとう。

 

https://www.amazon.co.jp/%E6%9C%80%E5%89%8D%E7%B7%9A%E3%81%AE%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%83%E3%83%97-%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC/dp/490324170X

 

ダイバーシティの成功には、マネージャーの主体的な関わり・交流・社会的説明責任の付与が不可欠

HBR 2017年7月号の特集は「生産性」
これも気になるテーマなんだけど、やっぱり私はコチラです。

2016年のマッキンゼー賞受賞論文
「差別の心理学:ダイバーシティ施策を成功させる方法」...
ハーバード大学教授 フランク・ビドン
テルアビブ大学准教授 アレクサンドラ・カレフ

ここ1年以上にわたり、定期的に掲載してきたアンコンシャスバイアス関連記事の集大成のような内容。
これを読まずしてダイバーシティを専門にしていますとは言えません(^_^;)

1990年代末から2000年代初頭にかけて、金融業界を中心に複数の訴訟騒ぎがおき、企業はダイバーシティに一層配慮するようになった。(例:この15年間でメリルリンチが支払った訴訟総額は5億ドル近くに及ぶ)

それによりダイバーシティ研修などの取組は拡充されたが、結局のところ平等化は進んでおらず、ダイバーシティの取組の大半はダイバーシティを高めていない。
基本的には1960年代から使ってきた旧態依然としたアプローチで何度も何度も勝負に出ているだけなのだ。この手の手法は事態を改善させるどころか悪化させるコトの方が多い。

強制的手法は偏見を根絶するどころかむしろ強化しかねない。人間は自らの自律性を主張するために、規則に反発することが多い。取り締まりをゆるめた方が、よい結果が出ることが分かった。
・マネージャーが業務中に女性やマイノリティと接触する機会を増やすこと
・社会的説明責任を醸成してマネージャーが公平な人間だと思われるように仕向けるコトの方が効果的。

効果のなかった研修
・強制的なダイバーシティ研修
・応募者への登用試験
・苦情申し立て制度

効果のあった研修
ダイバーシティ推進特別チーム
・メンタリング
ダイバーシティマネージャーの設置
・任意参加の研修
・女性を対象としたカレッジリクルーティング制度

マネージャーに協力させるための方法は、①マネージャーにダイバーシティ問題の解決に当たらせる、②マネージャーと異なる集団に属する人々が接するようにする ③変化のために社会的責任を奨励する 

・関与
信念と行動が一致していない人は、「認知的不協和」を経験している。信念か行動のいずれかを変えることで不協和を「修正する」傾向がある。したがって、特定の見解を支持するようなやり方で行動するように人々に促すと、彼ら/彼女らの意見はその見解の方に近づくのだ。
*メンター制度は最も効果的

・交流
集団間の交流によって偏見が減少しうることは、第二次世界大戦中の欧州戦線で実証された。
マネージャー研修生に様々な部署を経験させたり、横断的なチームで行うプロジェクトのような自己管理チームは効果的

・社会的説明責任
周囲に良く見られたいという人間の欲求を刺激することで効果がある。CEOをトップとするダイバーシティ推進特別チームの設置は、社会的説明責任の醸成に役立つ。
ダイバーシティマネージャーをおく方法も、社会的説明責任醸成によって、社会的包摂(ソーシャルインクルージョン)を強化する。

強制的に取組に参加させ、実践に移さなければ罰するというやり方では、人々を動機づけるコトは出来ないのだ。

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あなたは、傲慢なリーダーになっていないか?

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HBR2017.06号でもう一つ気になった記事を紹介します。

なぜ人は昇進すると横柄になるのか
権力のパラドクスを回避する3つの方法
カリフォルニア大学バークレー校 
教授ダッチャー・ケルトナー

小さいとはいえ、社員を雇い社長を名乗り、いくつかのNPOでは理事という経営の一旦を担う役割を持つ身としては、自戒を込めての(^_^;)、エグゼクティブサマリーです。
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・人は通常、共感、協働、偏見のなさ、公平さ、分かち合いなど、他者の利益を増進させる特性や行動によって権力を得る。しかし、自分に力があると感じたり特権的な立場を享受しはじめるとこうした資質は影を潜めるようになる。
ーー権力は腐敗するーージョン・アクトン卿

・人は自己の長所を土台にして出世するが、立場が上になるほど、タチの悪い行動を取るようになる。
クッキーモンスター実験 
三人一組のメンバーから無作に一人を選びリーダー役に指名する。グループで文書を作成する作業を30分やってもらい、その後焼きたてのクッキーを一人一皿、そしてもう一皿1枚余分に出す。みんなが遠慮する中2枚目に最初に手を出すのは、必ずといって良いほど、リーダー役に指名された人だった。

・調査研究で以下の点が明らかになっている
裕福な人は、賄賂や脱税など非論理的な行為に手を染めることは許容されると答える確率が高かった。
MBA保有しているCEOはそうでないCEOよりも、自分の報酬は増えるが会社の価値が下がる原因となる利己的な行動をとる可能制が高い

・権力のパラドクスを避けるための自覚と行動とは

1.自己認識を広げる
 権力を得ると、人は一種の躁状態になる。気分が高揚し、エネルギーにあふれ、報酬を渇望し、自分は全能であり、リスクを取っても平気である、と。そして、向こう見ず、無礼、非論理的な行動につながる

このような考えや感情と向き合うだけで前頭葉のある分野が動き出して、最悪の衝動を抑制しようとする。
自己認識は、日々マインドフルネスを実践することで身につけられる。静かな場所で深呼吸をする、自分の身体感覚、周囲の音に集中する。
自分の立ち居振る舞いをよく考えるコトも重要。
あるケーブルテレビ局の脚本チームは偉い順に昼食のサンドイッチを配る。米軍食堂では逆、部下から先に配る。自分の部隊への敬意を表すために

2.共感、感謝、寛大さを実践で示す
米上院本会議で共感を示す表情や声の調子でスピーチを行った議員は、傲慢で威嚇的な態度で話した人よりも可決された法案が多かった。
ささやかな形で感謝を伝えることもポジティブな結果を生み出す。
グループのメンバーと「シェア」する人は、尊敬を集めて影響力を持つのに値し、リーダーにふさわしいと見られる。

共感を実践する方法
・話をする際に的確な質問を1つ、2つ投げかけ重要なポイントを自分の言葉で言い換える
・いかにも楽しそうに人の話を聞く
・問題を抱えた人がきたら、残念ですね、それは本当に大変でしょうと、心配しているコトを伝える、急いで判断したり忠告しない
・事前に少々時間を取り、これから会う相手の状況やどんな人かを考える

感謝の気持ちを実践する方法
・心を込めて感謝を伝える
・よい仕事をしたときは、それを特に取り上げて高く評価したメールやメモをタイミングよく出す
・裏方も含めてチームに貢献した各人の価値を公に認める
・背中をポンとたたく、グータッチ、ハイタッチなどその場にふさわしい身体接触を使って成功を祝す

寛大さを実践する方法
・部下と1対1で話すチャンスを作る
・重要で注目されている職務を任せる
・ほめるときは惜しみなくほめる
・注目を独り占めせず、チームと組織への成功に寄与した全員を正当に評価する

ネットの差別をなくすための二つの原則

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ここ2年ほど、HBRではアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)に関連する記事をよく見かける。
ビジネスにおける不公平・不平等、差別や格差の奥底に、無意識の偏見や差別の構造が潜んでいることに改めてアンテナを立て、排除する仕組みを作ることが求められています。
 
「ネット市場の差別をどう解決するか」
ボストン大学教授 レイ・フィスマン ハーバードビジネススクール助教授 マイケル・ルカの記事より(ハーバードビジネスレビュー2017年6月号P16-P26)
 
 eコマースの台頭により、インターネットは差別を終わらせるどころか、差別の発生源になっていることが明らかになった。不利な立場の人々は、ネット上で自分の素性が明らかにされてしまうため、オフラインの世界で長年立ち向かってきたのと同じ困難に多数直面している。差別をしたい人は、一度も顔をあわせたことのない相手を差別の被害者にすることも可能だ。
 
短期宿泊用のマーケットプレイスAirbnbは、オンライン市場で差別が台頭している。黒人らしい名前は白人らしい名前に比べリクエストを承認されるケースが16%少なかった。
黒人らしい名前のリクエストを断ったホストの大半は過去に一度も黒人に貸していない。
(*Airbnbは、この調査結果や批判の高まりを受け、差別を減らす改善策を講じた)
 
アルゴリズムが生み出す差別は、人間なら避けたであろう形で起きている。
グーグル広告で人種がどのような役割を果たしているか調査したコンピュータサイエンス教授ラターニャ・スウィーニーの調査では、アフリカ系米国人によくある名前(例:デショーン)と白人によくある名前(例:ジョフリー)を検索し、その検索画面に表示された広告を記録した。その結果、黒人らいし名前を検索した方が、過去にあったかもしれない(自分の)逮捕歴を調べるよう勧める広告が多く表示された。 
これは、アルゴリズムが、ディショーンを検索する方がより逮捕に関わる広告をクリックする(したがってグーグルに収益をもたらす)可能性が高いと判断した結果である。
 
オンライン市場の設計に際して差別防止の指針となる原則は次の2つ。
1.差別の可能性に目をつぶってはならない
 ・利用者の人種と性別に関する定期的なリポートの作成
 ・自社プラットフォームにおける人種・性別グループごと
  の首尾をはかるための尺度の設置
2.実験的な思考様式を維持する
  差別の増減に影響を与えそうな選択肢を他の介入手段と
  あわせて試してみるには、無作為比較実験を実施すると
  よい。
<設計の判断基準>
・情報を出し過ぎていないか
プラットフォーム側にできる最も簡単で最も効果のある見直しは、人種や性別など慎重に取り扱う必要があるかもしれない個人情報を商談合意に至るまで表に出さないことだ。
 
・取引のプロセスをさらに自動化できないか
自動化の増強とごく普通の経済的インセンティブを巧みに導入すれば差別をなくすことができる
 
・差別禁止項目をなるべく利用者に意識させる
 
・差別問題を意識したアルゴリズムを使う
 
プラットフォームも大きな社会的状況に含まれる存在であり、単に差別を助長しない設計にするだけで肌の色や性別による差別がない世界が実現する訳ではない。・・・・・・
・・とはいえ「正しい行いがよい結果を生む」という理念が通用するケースも多数ある。
 
米国の交響楽団に多様性をもたらした事例が象徴的
・1960年代中頃の米国五大交響楽団(ボストン・フィラディルフィア、シカゴ、ニューヨーク、クリーブランド)にしめる女性楽団員の割合は10%未満だった。
・1970年代から80年代にかけて、スクリーンなどの遮蔽物の向こう側で演奏させた。この取り組みは女性音楽家の成功率を160%に増やした。
 

アンコンシャスバイアスにアンテナを立てよう

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ダイバーシティインクルージョンの肝とも言えるのが、多様性に対する柔軟で楽観的な思考スタイルをどう維持できるかということ。こり固まったメンタルモデル(認知的枠組み・モノを見る世界観)に気づき、それを手放すことは多様性を活かす上で不可欠なことだ。
最近、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)トレーニングのニーズが非常に高まっているのも、このメンタルモデルが強固に組織の中にはびこっているからだろう。
2014年のガーディアン紙にクリスティーヌ・ラガルド氏のコメントが掲載されていたので紹介したい。女性自身が持つ無意識の偏見(女性にはリーダーは無理、私はにはできない)をまず捨て去ろう、というメッセージ。しっかりと受け止めたい。

---以下、クオリア訳---

・無意識の思い込みがもたらすもの

私たち女性は自らに染み込んだ思い(自信の無さを含め)そのせいでチャンスを逃し、トップへの道をあきらめてしまっている   

クリスティーヌ・ラガルドはかつてフランス有数の企業から女性ではパートナー(共同経営者)になれないと警告されたことがあります。

無意識での思い込みは人生のあらゆる面に影響を及ぼします。私たちは意識せぬまま、自分と似た外見、考え方、バックグランドを持つ人々を好む傾向にあります。誰もが自分は寛容で客観的な人間と思いがちですが、人が自身や他人をどう理解し評価するかは、家庭環境、文化、過去体験から形成される個人の考え方・価値観に大きく影響されます。これはさまざまな研究が実証済みです。
時間をかけて蓄積された思考パターン、推論、解釈(あるいは思い込み)は、情報を素早く効率的に処理するために有用な側面もあります。生死のかかる局面では、思い込みはひとつの長所・不可欠な特質でさえあります。しかしビジネスにおいてはその代償は大きいものです。客観性に欠ける決断、究極的にはチャンスを逃すことにつながりかねないからです。

Lord Davies(英国貴族院議員)による最近の報告では、FTSE100企業の全取締役に占める女性の比率は20.7%となっています。2011年の12.5%から大きく改善しているものの、両性の平等というにはほど遠い状況です。この背景にあるのは、男性だけでなく女性自身もが持つ無意識の思い込みであるといえないでしょうか?
私たちが抱く野望もまた、既存の「ものさし」を反映したものとなりやすいのです。現在重要な役割を担う女性が少数派であるという事実によって、女性たちはキャリア構築にあたり、無意識のうちにトップを目指すことから後ずさりしていないでしょうか。思い込みのかたちも様々で、成功するにはもっと男勝りでなければと考える人もいれば、自らの能力や強みに疑問を持つ人もいます。
こうした思い込みはまた、クリスティーヌ・ラガルドIMF初の女性トップ)のようなロールモデルとなる女性たちについての記事で助長されることもあります。ラガルドは最近になって、フランス有数の企業から女性ではパートナーになれないと言われた自らの体験を明かしました。「ラガルドでそうなら、自分も同じ目にあうに違いない」との思いに至るのは容易でしょう。
このような思い込みは、失敗への不安を和らげてくれる一方で、私たちが持つ真の可能性を遠ざけてしまうことにもつながります。それでは、どうするべきなのでしょうか?
Newton Investment ManagementのCEOヘレナ・モリッセイ(Helena Morrissey)は、「多様な考え方と視点が必要ということに尽きる」と考えています。そしてその多様性を持つため、企業は自社の優秀な女性従業員に投資し、職位を上げながら育てていくべきだと語っています。
クリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde) も同意しています。「今は、会議室で私以外は全員男性という場合がほとんどですが、これでは組織全体を動かすのは難しいでしょう。私の存在が組織を変えられる時というのは、中間管理職やその上級層に女性が増え、マイノリティである彼女たちを私が支援することで、彼女たちが働きやすくなり、自信を持ち、思い込みを振り切ることができるようになる、その時なのです。」 

しかし本当の変化を起こすためには、女性もまた自ら持つ無意識の思い込みに目を向け、害となりうる考え方を捨て去らねばなりません。
思い込みは内に宿ります。私たち自身から生まれるのです。企業文化に目に見える変化を望む前に、まずはそれが十分に理解されなければなりません。

私たちは先入観を捨て、新しい考え方を学ぶ必要があります。ロールモデルとなる存在が身近にいなければ、優れたリーダーの特質を自ら定義し、それを目指していかなければなりません。 

http://www.theguardian.com/women-in-leadership/2014/may/01/unconscious-bias-wome
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